「"城の崎にて"を追いかけて」

 

1. 城崎温泉へ行く理由

 さてさて、僕が旅に出かけるのはいつも突然である。どうしてかは自分でもわからない・・・突然「そうだ、どこどこへ行こう!!」というインスピレーションがひらめいて、あわただしく準備をして飛び出るのだ。

 そう、去年の年末に札幌に行ったのだって、去年の夏、甲子園を観に大阪に行ったのだって突然のひらめきに従ったまでだ。

 だから、いつもチケットとの格闘である・・そう夜行バスなどの席が満席であるかなしかの瀬戸際の場合が多い。夜行バスのチケットは結構すぐに埋まるものなのだ。

 まあ、今回は幸い、京都行きの夜行バスが取れた・・といってもかなりすれすれの勝負であったが・・まあ、当然だろう、帰省シーズンといえばそうなのかもしれないのだから。明日の朝には京都に着いて、そのまま、城崎に向かうつもりだ。

 さて、どうしてまた、今回、城崎温泉なのか?

 それは僕が志賀直哉の小説が結構好きだからである。そう、志賀直哉の代表作の一つとして「城の崎にて」という小説がある。この小説の舞台である、この温泉にどうしても行ってみたかったわけである。でも、私が住む関東から、兵庫県の奥の奥にある城崎温泉へは気軽に行ける距離ではない・・ということで、行きたい行きたいと思いつつも、なかなか行けなかったのであるが、今回思い切ったわけだ。

 大学の時に、この志賀直哉作品についての講義を受けたことがある。その時、かなり真面目に志賀直哉作品を読んだし、志賀直哉についても研究したものだ。そういうところから、その志賀直哉の愛した城崎温泉・・それはどんなものであろうか?当然興味は湧くものである。それで行ってみたかったわけだから・・・それこそ、その頃から起算して10年来の憧れを、今、かなえんとしているわけで、まあ、10年間も憧れつづけるとは僕も結構しつこい性格なのであろう(^-^)

 それだけ、志賀直哉について研究もしたのなら、当然、小説「城の崎にて」についても詳細に覚えてるんでしょ?という問いもあるかもしれないが・・・実はあまり覚えていないのだ・・・うーん、確かに読んだことは読んだし、志賀直哉の心情を克明に描いた心境小説だというおおまかなイメージはきちんと覚えているのだが、詳細に及ぶ細かいことは覚えていないのだ。

 ただ、この「城の崎にて」に出てくるフレーズでいたく気に入っているフレーズがある。そう、日常でもよく使うのだが、 「フェータル」(fatal 致命的)という英単語である。確か、「城の崎にて」の主人公は山手線だかの国電で轢かれた傷を癒すため(実際に志賀直哉自身もそのようなことに遭ったらしいが)城崎温泉に来ていたのだった・・・そこでその傷は「フェータル」なのか?という問いが投げかけられる場面がある・・・それはよーく覚えている。

 だから、日常会話でもその言葉をよく使う「それはフェータルなの?」とか「フェータルなことでなければ、いいんではないですか」とか・・・あまり一般的な単語ではないから"???"という反応が返ってくることもあるのだが・・・僕が「フェータル」とか連発していれば間違いなくそれはこの小説「城の崎にて」の影響である。

 まあ、そんなとこだけ覚えていて、肝心の本筋をよく覚えていないのだからしょうがないとも言えるのだが・・・

 ともあれ、僕はその「城の崎にて」の舞台へ向かっている。実際、志賀直哉も何度も足を運んだ場所だ。かなりワクワクである。

 でも、20代の若者が・・グアムとか沖縄とかリゾートを目指さずに・・・いやー城崎温泉がですね、って言っているのは、なんだかかもしれないが(^-^)

2001年8月1日(水) 23:20 京都行き夜行バスに乗る前

2. 京都から城崎へ

 ということで、夜行バスは早朝の京都駅烏丸口へ滑り込み・・・そう、僕は語り番外編「もてない男、関西食い倒れツアーに行く」 の時・・そう、ちょうど一年前ということになるが・・・同様に京都行きの夜行バスで京都に来ているので慣れたものである。

 まあ、洗顔のできるトイレはどこであるとか、パソコンを打てるようなテーブルのあるプレイスはどこであるとかすぐにわかるのである。ということで、ちょうど去年と同じ場所で、やはりリアルタイム旅行記を更新しているのはデジャブとかいって気取る必要もないことである(^-^)

 さて、これからどうしようかとも思ったのだが、これからどんどん暑くなるであろう京都で時間を過ごしてもしょうがないかなっていうところで、城崎まで鈍行列車でトコトコといってしまおうかと考えている。

 ちゃんと切符も手に入れて、ちょっと気分は999の発車を待つ鉄郎って感じかな(^-^)そう、憧れの地の城崎への片道切符(^-^)

 ちょっとお腹もすいてきたが・・・ちょうど、昨日職場の同僚からカロリーメイトとかをもらっていて、これは旅には非常にありがたいものだ。そういえば年末の北海道旅行(語り番外編「もてない男、札幌へ帰る」)の際も別の同僚からだがカロリーメイトをもらって朝食として非常に助かった思い出がある(^-^)どうもありがとうですだ(^-^)

 ではでは、いざ城崎へ(^-^)

 2001年8月2日(木) 7:40 京都駅にて

3. "城崎にて"温泉入りまくり 

 ということで、8月2日(木)の昼前には城崎へ着く。やはり西日本の暑さはニュースになるほどであり、うだるような暑さであった(^-^)

 予約しておいた宿に荷物を置かせてもらうと・・・どうやら、午後2時からは、宿でもらえるチケットで外湯が無料になるとのこと・・・

 外湯・・・宿にあるのが内湯で、それに対する外湯は文字通り外にある公共浴場である。城崎温泉には外湯が7つあり、実は温泉の主役はこの外湯らしい。そう、外湯をめぐるのがここの温泉に入る流儀なわけだ。

 しかも、チケットを持っていくだけでは無料というわけには行かず、浴衣と下駄といういでたち等で宿に投宿しているというしるしが必要なわけで(^-^)なるほど、町全体で温泉を盛り立てていこうという姿勢は面白いですな(^-^)

 まあ、宿のチェックインまでやや時間があるわけで、その間に城崎町文芸館で志賀直哉に関して学んだり、温泉寺といういかにも温泉場らしいところを観たりして時間を過ごし・・・宿に入って、さあ、いざ浴衣を羽織って外湯めぐりというわけですが・・・

 やっぱ、着慣れない浴衣をはおって外を歩くというのははじめは勇気が要ったものであるが・・・慣れてしまうとなんてことはない・・というのも夕暮れともなれば、まわりは老若男女みんな浴衣姿であるのだから(^-^)

 しかも、普段あまりできない浴衣で出歩くというのは結構快感にさえなるのである(^-^)

 ←浴衣姿でご満悦の僕

 そして、翌朝(8月3日)・・まあ、もう慣れっこになった、浴衣姿で朝風呂に出かけているじゃないですか・・・朝寝して9時頃ゆらゆらとさ(^-^)・・・したら、通り沿いの銀行とかはもう開いていて行員さんとか働いているんですよ・・そう金曜日だから、平日なわけであるから。

 なんかとてつもなく優雅な気分だよね・・・自分だって休み取ってなかったら、仕事着着てえっちらおっちら働いているわけですから。それが寝ぼうして朝風呂で浴衣で下駄カラコロですからね(^-^)

 まあ、そんな感じで・・・温泉は入りまくって幸せな私である(^-^)そして、城崎温泉は非常に落ち着いた雰囲気なのもよい。温泉場にありがちな過度な派手さや下品さがないのである。安心して心穏やかに歩いていられるという感じである(^-^)

 昼の城崎温泉と夜の城崎温泉(夜も上品であります)

  

 あまりにも気に入ったので、今日(8月3日)も城崎温泉に投宿している。7つある外湯のうち5つは制覇したから・・・あとふたつ・・・明日の朝いけるかどうか(^-^)

 2001年8月4日(土) 0:50 城崎温泉の宿にて

 

4. そして城崎を後にする 

 制覇いたしました、今朝8月4日(土)午前9時45分・・・残りの二つの外湯、御所湯とコウの湯の二つを朝湯でダブルヘッダーでしたが(^-^)

 まあ、今日は土曜日であったので朝湯に浴衣で出かけても、まわりは休日気分であったのでそんなに優越感はなかったのですけどね(^-^)

 その後、さてどこへ行こうかというところなのですが、城崎から二駅ほど山陰本線を京都方面に戻ると豊岡という街があります。そこから、北近畿タンゴ鉄道というのに乗っていくと、有名な「天の橋立」に行き着けるということで、今そちらへ向かっているところなのですが・・・

 この、「天の橋立」・・・日本三大絶景ということで有名ですよね・・・宮城県は松島とあとどっかと、そして「天の橋立」ですものね(^-^)松島は宮城県に住んでいたこともあるので何度も足を運びましたが、天橋立はなかなか来れないわけで・・はるばるここらへんまで来たわけで行ってみようと思うわけで(^-^)

 でも、豊岡から出ている北近畿タンゴ鉄道・・なんかあまり本数がないので1時間近く待って乗車しているわけですが、北近畿タンゴ鉄道略してKTRだそうです。タキンキ ンゴ イルウェイってわけだと思いますが・・・そうそうタンゴは丹後なわけでしょうね(^-^)すごく洋風でかっちょいい名前なのですし、ややもすると踊りだしたくなるような名前ともいえましょうが(^-^)、実際乗ってみるとそういう感じのローカル色あふれるローカル線そのものですな(^-^)っていうか一両ですし(^-^)

  

2001年8月4日(土) 12:45 天の橋立に行く途中、北近畿タンゴ鉄道において 

 

4. 天の橋立で股を覗く

 天の橋立を見てまいりました。なるほど、なかなか絶景と言えるのでしょうか。ロープウェイなりリフトなりで展望台まで上がりまして・・・これまた代々伝わっている股の下を覗いてその天の橋立を見ますとなんか空と海がくっついたように見えるそうで・・・それもなんていうか、よーく見るとこんなんが見えてきますっていう図形みたいなもんで、見えるような見えないようなって感じで(^-^)見えた見えた!!と騒いでいる方があればよーわからんって感じの方もおられる感じで・・僕はああいう図形とかもとんと模様が浮かんでこないたちの者ですから、よーわからんって感じで(^-^)

 っていうか、なんか頭に血が上ってボーっとしたところでそんな感じに見えてくるっていうことらしいですから・・・これまた、なんかの錯覚みたいなもんなのでしょうかね(^-^)

 なんか周りで見えた見えた!!と騒いでいる方もいたので、僕もそれならばぜひ見たいなあって感じで、がんばって股の下を覗き続けてボーっとしてみましたが、見えたような気もしますが、あまりよーわからんって感じでありました(^-^)

 みんなで股の下覗いて、うーん見える見えないなんてやっているのを見るにつけ、結局、頭に血いさ昇らせてうんうんやっているわけだから、なんか奇妙な光景といえば奇妙な光景でありまして・・・悪い言葉を使えばみんなでラリってしまっているっていうか・・集団ラリって感じでもあります(^-^)

これが天の橋立→ 

 天の橋立から、京都に来まして今日はここに滞在します。京都のメル友と会ってみるつもりなんですけどね(^-^)いよいよ明日でこの旅もフィナーレです(^-^)

2001年8月4日(土) 19:00 京都のホテルにおいて

5. 京都ナイトフィーバー

 ちょうど、一年前、僕は京都を訪れている(語り番外編「もてない男、関西食い倒れツアーに行く」 参照)。その時の大きな目的の一つに天下一品ラーメン京都総本店で喰らうということがあったのだが、今回会ったメル友とはその天下一品ラーメン好きという趣向についても非常に意気投合していたので、まあ、一緒にそれを食べに行きましょうということになっていて、待ち合わせもその店の前ということであった(^-^)メル友との待ち合わせがラーメン店の前というのもそれなりにマニアックかもしれないが、それがらしいといえばらしいし、また良しだと思いつつ(^-^)

 別にその店は京都駅から交通至便の位置にあるとは言い難いのだが、それでも食べに行きたくなる魅力を内包しているのであるところがすごいところで、具体的にどんなラーメンか知りたくなった方は語り番外編「もてない男、関西食い倒れツアーに行く」に写真付きで紹介しているのでそちらを参照されたい(^-^)

 まあ、旅先でメル友と会うというのはいいもので、やはりホームページ作成者冥利に尽きるというものである。ホームページ作成者の最大の喜びは読者に読んで頂いて反応をいただけるということでありますし、そして実際にその読者とお会いできるというのはその上をいく喜びであるのは間違いないところでありますので(^-^)

  まあ、いろいろなことを語り合って、夜もふけていきましたが・・・楽しい京都ナイトでありました(^-^)

 独り旅は好きだし、ベテランだと思っているのだが、やはり独り旅の途上においてはさびしいと思うことだってある・・・そういう時このようにメル友さんとかと飲んだりできると、それはうれしいし、いい思い出になることができる・・メル友さん、どうもありがとう(^-^)

2001年8月5日(日) 16:22 都内某所ドトールにて

6. そしてフィナーレ

 ということで、私が志賀直哉の足跡を追っかけるたびはフィナーレを迎えました。

 さすが、志賀直哉の愛した土地・・城崎温泉は落ち着いていい町でした。町あげて温泉街として守り立てていこうとしている姿勢は本当によかったですし、なにより温泉街にありがちな下品さがほとんど感じられなかったのがよかったです。

 志賀直哉は山手線に轢かれて療養のために城崎を訪れましたが・・・僕はさすがに、いくら足跡をたどるっていっても、電車に轢かれるところまでは再現いたしませんでしたけどね(^-^)

 志賀直哉も東京から城崎まで行きました。僕もそうです東京発で城崎温泉まで・・・バスと電車を乗り継いで・・・

 そして、電車に轢かれた傷こそありませんでしたが・・・やはり、現代の都会に住み働くというのはさまざまなストレスを恒常的に浴びるということ・・・それはやはり心に少なからず小さな傷ができているということでしょう・・・今回もまた衝動的に出発した城崎温泉行でしたが、もしかしたらそれらを癒しに出かけたくなったのかもしれない・・そう志賀直哉が傷を癒しに出かけたがごとく.。

 そういう意味では僕はまたどこか旅に出たくなるのでしょう・・・その時は、どこに出かけたくなるのか・・ぼくにもわかりません・・・まあ、そのときはまたリアルタイム旅行記をするでしょうから、ご期待を(^-^)

2001年8月5日(日) 16:22 都内某所ドトールにて

 

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