恋のオペ

 「恋は闇」という慣用句がある。

 なるほど、よく言ったもので、恋をしてしまうと、想う相手のこと以外は真っ暗、想う相手ばかり見てしまう、しかも、いいところ以外は見えなくなる。

 その気持ちはよく分かるし、うん、その通りだ。

 ただ、「闇」とまで言ってしまうと、その想う相手さえ見えていないことになってしまうので、厳密にはそれはちょっとと思ってみたりする。

 そうだなぁ、「恋の白内障」と言おうか。白内障とは、目の水晶体が白く濁って見えにくくなる症状がある。 恋をすると想う相手のいい面のみ見てしまい、そうでもない部分が見にくくなるという感じが、そんな感じにも思える。

 結局、のぼせ上がってしまうと、客観視ができなくなるんだよね。そう、人間は総じて長所・短所をあわせ持つ存在だ。いい面だけの人なんていないのだ。でも。まぁ、私は男性だからその立場で言うと、好きになってしまった女の子はあたかも「女神」のような存在に思えるわけだ。それが「恋の白内障」


 この、「恋の白内障」はなかなか自然治癒するものではない。幻想的な神話のように根強く症状は残っていくものだ。

 その恋がお互いがつきあうとかいった状態になってハッピーに治癒する場合はいいんだ。その後、その人の実態を間近にして、愕然と幻滅することもあるというリスクはあるものの、恋の白内障のハッピーエンド的治癒と言ってよいだろう。

 でも多くは、「ごめんなさい」とか「あなたとはつきあえない」とか「あなたのことは好きではない」・・・想う相手からのつきあえないことの意思表示といった鋭いメスによる手術により治癒する。

 この手術はかなりイタイものだ。しかも、手術後すぱっと快方にむかわず、「未練」という後遺症に悩まされることもあるわけで、恋の白内障はなかなかに難病なのだ。

 

 (2003.2.9)

 

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